Цитаты из книг

 
    今回はアメリカのドラマ、ジェームズ・スペイダーとメーガン・ブーン主演の「ブラックリスト」(吹き替え)からの引用です。筆者が何年か前にロシアに行ったときにアエロフロートの機内でこのドラマを見つけました。ロシアの航空会社の機内でこれを見られるののがなんとも皮肉めいていて個人的には面白かったです。シーズン3第2話「マーヴィン・ジェラード」でこんなシーンがありました。ロシア大使館の職員がアメリカの議員の娘でニュースキャスターである女性と勤務時間中にホテルにしけ込む。その部屋に主人公のレイモンド・レディントン(演:スペイダー)が忍び込み、こんな台詞を浴びせます。

「まったく、ロシアの役人特有の仕事に対する倫理観のなさがこうも脈々と受け継がれているのは感動的ですらあるな」

    ソ連時代には薄給のせいでほとんどの人がまじめに働こうとしませんでした。「お金もない」「モノもない」と言われていたのに、何故だか家にはいろいろ揃っています。一般人は職場から部品を盗んで家で組み立てたり、お互いに盗んできたものを交換(例:盗んできたテレビと誰かが盗んできた肉を交換)しあったりしていました。 こんなジョークがあります。
「ソヴィエトは世界で一番豊かな国だね!」 「どうしてだい?」 「だって国民はずっと国からモノを盗み続けているのに、まだ盗むモノがあるじゃないか」

    役人は賄賂をもらわなければ仕事をしませんでした。 今でも地方の町では(筆者の経験・感覚で)日本の3、4倍くらいの時間がかかります。本来20分で済むところ90分近くかかっても別にかまいません。でも一週間でできるものが一ヶ月以上かかるとさすがに困りますね。スムーズに(普通に)ことを進めたかったら賄賂が必要です。仕事中に本を読んだり恋人と電話やチャットをしたりしますから、仕事は後回しです。仕方ありません。ロシアは文学の国、そして情熱の国ですから。

    プーチン政権になってからリーマンショック前までロシアのGDPは毎年7%近くの成長を遂げました。物不足なんて昔の話です(数年前筆者が師事していた先生が「ロシアは配給制ですよね」なんて言っていたので言葉を失いまいた)。給料も以前より上がったため、賄賂を払わなくても仕事をしてくれる人が増えました。しかしながら、以前より随分と豊かになった今日でも、仕事に対する倫理観のなさは受け継がれています。本を読んだりスマホをいじったりするのは、昔の名残なのでしょう。
    サボり以外でロシアでよく気になるのは職場での異性とのイチャつきです。ここ最近も日本やアメリカその他の国でセクハラ問題が頻繁に取り沙汰されています。しかしセクハラなどロシア人にとって大して問題ではありません。「触られたぐらいで、それがなんだって言うのよ」平気でこういう女性が多いです。まあ本人がいいなら別に構いませんが、筆者は「そんなことしてないで早くこっちの用事を済ませてくれ!」と何度かキレそうになった記憶があります。

    とある病院の更衣室で知り合いの女性が着替えていました。男性医師がノックもせず入り、「あ、いたのか!」と驚いた振りをしてみせます。慌てて更衣室から出るのかと思いきや、自分の目当てのもの(おそらく医療機器)を取ってから何事もなかったかのように部屋の外へ出てきました。日本だったら問題になりますが、ロシアでは笑い話で済まされます。これが倫理観のなさを助長させる一つの要因なんですね。

    もちろん、上で書いたとおり、資本主義を感じさせる真面目で丁寧な店員もいます。筆者が出会ったイクラショップの店員は典型的なロシア人とは違っていました(こちらを参照してください)。このタイプの人は比較的都市部に多いと思います。仕事に対する倫理観のないロシア人に会いたい方は、ぜひロシアの田舎町に行ってみてください。

参考文献:
The BlackList [created by Jon Bokenkamp], NBC, Seanson3 episode2 "Marvin Gerard"