Цитаты из книг

 
    

    北海道大学名誉教授の木村汎氏の著書『プーチンとロシア人』に、おもしろい内容が書いてあります。

    「ロシア人は空間(スペース)をたのしむ。何よりも好きなのは、肘を伸ばしうる余地 ― 何らの強制もなしに活動しうる余地である。彼らはつねに強制を避けようとしている。ロシア人の生活は流動的である」

    この本は2018年1月22日に第一版が発行されました。ちょうど筆者(私)はそのころロシアに行っており、帰国後、この本が発行されてしばらく経ってから購入しました。すると第1章から何やら親近感の湧くこの記述に出会いました。

    筆者がロシアの国内線に乗っていたとき、筆者の左隣に2人のロシア人が座っていました。2人は友達のようで、身振り手振りを交えて楽しく会話をしています。すると隣のロシア人がいきなり両腕を大きく広げました。筆者のことなどお構いなしに、大きな手振りで、何かを友達に伝えようとしていました。筆者はウォークマンで音楽を聴いていたのですが、その手がコードに引っかかって危うく断線するとことろでした。

    ロシアで偶然、大学で同じロシア語の講義をとっていた別の科の同級生に遭遇しました。筆者のアパートで少し話をすると、何と彼も機内でロシア人の大げさな身振り手振りに悩まされたというではありませんか。

そんなこんながあってからのこの本との出会いだったので、親近感が湧いたわけです。そうか、彼らは空間を楽しんでいたのか!

    ロシア(ソビエト)人はその広大な国土故の様々な影響を受けてきましたし、今も受け続けています。日本やイギリスのような島国ではありませんし、アメリカのように少数の国としか接していないわけでもありません。また中国(今は協力関係にありますが実際は警戒しています)と非常に長く国境を接していますし、西側にはヨーロッパが諸国があります。過去にはナポレオンやヒトラーの侵攻を受けました。広大な国土、そして特に南北にも長い(気候が違う)ことが功を奏して撃退することができましたが、ロシアの歴史は戦争の歴史でもあります。ロシア人たちが「肘を伸ばして」生活できなかった過去の反動が、今の「空間をたのしむ」という特徴に現れているのです。

    ソ連時代は土地柄農業も上手くいきませんでした。ソ連崩壊の前後には全国で食糧不足が深刻化しました(サンクトペテルブルクではプーチンさんが関連した(といわれる)食料スキャンダルなんていうのもありました)。そういう意味でも、以前より豊かになった現代ロシアでは肘を伸ばしうる精神的な余地(余裕)が生まれています。

    ロシアが核兵器を何千発も持っているのもこれに関係しています。ロシア人は警戒心が強く、安心して生活するために必要以上の防御・攻撃能力を保有したがります。地政学的な状況や現在のハイブリッド戦争がそうさせているわけですが、とにかく「肘を伸ばしうる余地」を守るために大量の核兵器は欠かせません。

    ロシアで、特に政治的なことに無関心な人に多く出会いました。「政界の人間と国民とは別の世界に住んでいる」「政治と国民生活は関係がない」と考えている人や「政治に口出しすべきではない」と言う人がいました(もっとも最近は筆者の知り合いでも反プーチンの人が増えているように感じますが)。これは「国防を除けば、政府は国民のためには何もしてくれない」ということを知っているからです。

    筆者の友人でおもしろいことを言っている人がいました。「知らなければ煩わされることはない」 肘を伸ばしうる空間的・精神的余地を見いだすためには、政治的事柄や社会を統制するルール、現状起こっていることに無関心であることが良いというわけです。

    ロシアに行ったときには、「肘を伸ばしうる余地」を楽しむロシア人を観察してみてください。

参考文献:
木村汎(著) (2018) 『プーチンとロシア人』 (産経新聞出版)