Российско-украинский кризис (2021—2022)

      

ロシアによるウクライナへの軍事介入について、筆者の知り合いのロシア人達の率直な感想を載せておきたいと思います。 筆者は今回の軍事介入に関連して、ロシアの友人からこんな声を聞きます。 「なぜイスラエルがパレスチナを攻撃することは許されるのか」「なぜアメリカが石油利権確保のためにイラク戦争をしても(人を殺しても)誰も気にしないのか」 ロシア人は今、こういった不公平さをよく口にしています。 プーチン氏も「なぜNATOがセルビアを空爆することは許されるのか」と不満を口にしていたそうです(①)。 2014年のクリミア編入をめぐっては、このセルビアへのNATOの攻撃がロシアによって再現されているものだという見方もあります。 セルビア空爆は1999年に行われました。国連安保理の全会一致の合意がないにもかかわらず。 当時のプーチン大統領は安全保障会議書記で、まだ首相でも大統領でもありません。権力のない人間でした。そのプーチン書記の目の前で、ロシアの意見が軽んじられる出来事が起こったわけです。プーチン書記は祖国がそのように見下されていることに憤ったに違いありません。大統領となってからは、いつかこの悔しさを奴ら(西側)にも思い知らせてやろうと待っていたのでしょう。 在日ロシア大使のガルージンさんは、TBSのインタビューを受けた際、「国際社会からの経済制裁」という言葉に反応し、「「国際社会」ではありませんよ」と反論しました。 つまるところ全世界がロシアを非難しているわけではなく、全世界が経済制裁をしているわけではありませんから、ガルージン大使の言っていることは正しいです。日本は西側の価値観に照らして問題だと思う行為に対してそれを止めるべく制裁をしているわけです。 日本を含め西側諸国が「国際社会=西側民主主義陣営」と考えているということがよくわかるやりとりでした。 「悪いのはプーチン大統領1人だ」「多くのロシア人は戦争に反対している」こんな声がメディアではよく報じられますが、少なくとも筆者の知り合いでは反対していない人のほうが多いです。 プーチン大統領は特殊な人なのではなく、多数派のロシア人のうちの一人なのです。不満がたまっていても何もしない何もできない人とは違って行動を起こす人なのです。勇気を持っているんです。戦争を始めることは勇気ではないと言う人もいるかもしれませんが、間違いなくこれは勇気なんです。物事を分析し、どういう状態に変えるか、どんな手段を使ってそれを成し遂げるか、リスクをどう回避するかを考え、そして実際に行動に移すのです。全力で、最後まで。プーチン大統領は裏の世界で生きてきました。いくつもの修羅場をくぐり抜けてきました。「壁際に追いやられて殺されるのはいやだ」と誰もが思うことをプーチン大統領も思っていたのです。それでもいつも逃げることなく困難に向かっていくのです。勇気以外の何でもありません。ロシアは治安の悪い国ですが、人を殺すことは依然ハードルが高いんです。人を殺すと尊敬される国なのです。


■参考文献
①朝日新聞国際報道部 『プーチンの実像』(2015) 朝日新聞出版
②ナタリア・ゲヴォルクヤンほか 『プーチン、自らを語る』(2000) 扶桑社