МОЙ ОПЫТ

 

  2023年は、まだロシアとウクライナの軍事衝突が継続中で、西側諸国によるロシアへの経済制裁が発動中だった。企業撤退の影響で日本のクレジットカードが使用できないため、現地では現金で生活しなければならない。ロシアルーブルと円のレートで見ると、円から直接ルーブルに両替できればかなりお得という状況だったが、日本の両替所ではルーブルは扱っておらず、逆にロシアでは円は扱っていない。円をルーブルに換えるにはドルやユーロなど他の通貨を経由しないといけないという、日本人としては残念な状況だった。筆者は円からドルへ、そしてドルからルーブルへと両替した。日本円の弱いこと。どの通貨を介しても損しかしない。
   さて筆者は現金を持って、大好きなロシアのスーパー「マグニート」へ。まだロシア語がわからなかった学生時代に初めて行ったロシアのスーパーだ。当時は「◎$♪×△¥●&?#$!」 「○%×$☆♭#▲!※」 という風にしか聞こえなかった店員からの質問も今ならわかる。わかるのにいつもレジがスムーズに通れない。なぜだろうか。
  その1つめの理由は筆者が現金でしか払えないからだ。ロシアではカードで支払うのが普通だ。日本よりキャシュレスが進んでいる。だから店員がレジを空けていることが珍しくない。「あら現金なのね。ちょっと待ってね」と店員はあとからやって来ることがある。
  2つめの理由は筆者が5000ルーブル札や1000ルーブル札ばかり持っていたからだ。ロシアではできるだけお釣りが出ないようにお金を払う。店員は、細かいお釣りを出すのが面倒くさいとき、「メーニシェ ニェ ブージェト(もっと小さいお金出てこない)?」とか「ドゥヴァー ルブリャー イェースチ(2ルーブルある)?」などと聞いてくる(「◎$♪×△¥●&?#$!」はこれを言っていたのだ!)。店に小銭がないからではなく、出すのが面倒なのだ。筆者は銀行で5000ルーブル札を大量に受け取ったのでそれで払おうとしたが、毎回同じように小銭を要求された。仮に小銭があったとしても、1ルーブル硬貨、2ルーブル硬貨、5ルーブル硬貨は全て色が同じなので探すのが面倒くさい。これは店員も客も同じなのだ。
  3つめの理由は、またしても5000ルーブル札だ。レジで5000ルーブル札を渡そうとしたらどうなったか。まず店員は手を引っ込めた。「5000ルーブル札だと!?何者だコイツは」と言わんばかりの目でこっちを見つめた。こっちがお札をレジに置くと、またしても「メーニシェ ニェ ブージェト?」と言い、まだお札に触れようとしない。「日本人なんで・・・これしかないんです・・・すいませんね・・・」と言うと、ようやく、もちろん面倒くさそうにお札を持ち上げた。天井の蛍光灯の光でお札を透かして偽札チェック!5000ルーブル札を渡すと、どの店の店員もこれをやる。ようやくレジにしまい、面倒くさそうにお釣りをくれた。花屋でも同じだった。5000ルーブル札を透かしてチェック。そこでは「お、さては金持ちだな?どこから来たんだい?」なんて会話もあった。ロシア人はふつう5000ルーブル札では払わない。5000ルーブル札は、両替など、まとめてお金を受け取るときに目にするもので、一般のロシア人が財布に入れているものではないのだ。
   不思議なのは、500ルーブル札、1000ルーブル札、2000ルーブル札など、他の紙幣に対しては偽札チェックをしないことだ。一番大きい5000ルーブル札より偽造が難しいなどということがあるのだろうか。