店での買い物
9/272021
カテゴリー:筆者の体験
ロシアで買い物をするとき、日本では絶対にありえない光景を目にする。
■投げられる商品
ロシアの店でも会計の方法は2つある。一つはレジで店員に直接会計をしてもらう方法。もう一つはセルフレジで完全に自分で会計を済ませる方法だ。私たちが注意すべきなのは前者、店員にやってもらうときだ。流れとしては商品を置いて、バーコードを読んでもらい、置かれた商品を袋に入れるという、日本でもお馴染みのものだ。だが日本と全く同じというわけには当然いかない。買い物カゴに入れたままレジの台の上に置いてはいけない。客が自分で商品をカゴから出し、台に直接置く。カゴはすぐそばにあるとも限らないカゴ入れに置きに行く。台に商品を並べるとき、自分の前後の客の商品と混ざらないよう、レジに置いてある棒で仕切る。棒を使わず間隔を空けて置くというのでは意味がない。「棒で仕切っとけよ」と言わんばかりの表情を浮かべて「エータ ヴァーシー?(これはあなたの?)」と必ず聞いてくる。続いて「パケット ヌージェン?(袋はいる?)」と聞いてくる。筆者は最初に自分から欲しい枚数を言うことにしている。店員がバーコードを読み取ってからが日本人にとっては見所だ。店員は商品を台の反対側へ投げる。客は反対側で袋を持って待ち構える。さっと袋に入れていかないと次から次へと買った商品が投げ飛ばされてくる。板状のチョコレートは折れるどころかボロボロになり、重さのある商品によってチップスなどの柔らかい商品は潰される。友人にお土産を買うときには、店を選ぶかセルフレジで会計するかのどちらかはするほうがいい。
■押しつぶされる商品
筆者は日本の店の店員にいつも感謝している。丁寧に商品を扱ってくれるし、重さや堅さを考えてカゴや袋に入れてくれるからだ。忙しいだろうし、そんなに丁寧にやってくれなくてもいいですよ、とよく思っている。一方で、ロシアの店員は最悪だ。前述したが、自分で手早く袋に詰めないと、次から次へと商品が投げ飛ばされてくる。カップ麺がジェンガのように積まれるのはいいが、チップスの上に重いセリョートカ(ニシンの漬物)のパックを投げ落とされたり、そのプラスチックのパック(汁で満たされている)の上にさらに3kgのじゃがいもを置かれたりするのはいい気がしない。重さのある商品を先に読み取ってもらおうとして店員から一番近いところに置いても意味がない。店員は自分が読み取りたい物から読み取るからだ。ロシアのスーパーでは、日本とは逆に、たくさん買い物をしたときほどセルフレジに行ったほうがいい。
■こっちは売ってやってるんだ
社会主義の名残のあるロシアでは、特にスーパーで日本のような接客は期待してはいけない。ときどき資本主義を感じさせる店員もいるが、まだまだモスクワでさえも古い時代の店員がほとんど。「商品を丁寧に扱え!こっちは客だぞ!」とでも言おうものなら「こっちは売ってやってるんだ!」と返ってくる、そんなイメージ。資本主義を感じたければ高めの店に行ったほうがいい。神様とまではいかないが、客を大事にする店員がいる。モスクワである必要はない。地方の街でも高めの店なら可能性は高い。筆者はよくそういう店で、日本とロシアの生活の違いや、ロシアの愛想のない店員のことを話して笑い合ったりした。社会主義的な接客の例の一つが舌打ちだ。店には行ったものの、思うような物が見つからず、何も買わずに店を出た経験はほぼ全ての人にあるだろう。そんなときでも日本では「ありがとうございました」と言われる。ロシアではそんなことはありえない。とはいっても何も言ってくれないわけではない。ロシアでは、「買わねーなら来んなよ」とでも言いたげに、はっきりと大きく「チッ」と舌打ちをしてくれる。「うざ(笑)」と思いながら店を後にした経験が筆者には何度もある。客を失うという考えには至らないのがおもしろいところだ。